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「ところで、他の仲間はどうしたの? 瀬名琴音は?」
瑠奈は言いながら首を傾げる。
彼に琴音の顔が割れていないのが幸いだった。
まさか、自分を狙った二人を見張るために琴音本人がここにいるとは思わないことだろう。
「そんな質問に答えると思う?」
琴音は嘲るような笑みを口元に浮かべ、瑠奈に返した。
彼女は「それもそうだね」と笑う。
慧は純粋な疑問をぶつけることにした。
「時空間操作系を潰したいのはともかく……何故、硬直魔法を欲しがる? 石化して動きを止めてる間に操れるだろ」
瑠奈は指を鳴らし、石を生成した。それを宙に投げて弄ぶ。
「石化すると、対象の思考が停止する。例えば、両脚全体を石化した時点で既に思考停止寸前なんだよ」
石化とは単に身体が石に覆われるだけでなく、その内側も文字通り石と化していくのだ。内臓や脳、血管、骨、すべてが。
冬真の傀儡魔法は、相手の意識に入り込む必要がある。
しかし、思考停止していると、その入口が閉じた状態になってしまい、操ることが出来ないのだ。
しかも────。
「両脚を石化して拘束しても魔法は放ててしまう。かと言って、両手を拘束しても逃げられてしまう。だから、石化魔法では不充分なんだよね」
瑠奈を介し答えた冬真は、笑みを深め、冷徹な眼差しで慧を見据える。
瑠奈は親指と人差し指で銃の形を作り、その先を慧に向けた。
「そんなこと聞くってことは、君まさか硬直魔法の魔術師?」
幸いにもそれは的外れだが、そう思われて自分が狙われれば、隙をついて琴音が瞬間移動を繰り出せるかもしれない。慧はそう考えた。
冬真はまだ、ここにいる彼女こそが狙いの琴音だと気付いていないから。
「まさかな」
慧は適当に答えた。
隙を生むため、そして情報を得るため、続けて冬真に問う。
「お前は何故、桐生を生かしている? 僕がお前の立場なら、間違いなく殺してる。その魔法を利用したいなら、殺して奪って自分のものにした方が余程安全だろ」
律と同じようなことを言う、と冬真は思った。
「理由は簡単。……可愛いでしょ、こいつ。だからだよ。僕には敵わないって分かってるのに、何度も何度も裏切ろうとして。そのたびに記憶消されて、操られて、僕の忠犬になってるのに。ふふ、何て健気なんだか」
冬真は、昏々と眠る大雅を見やった。
それ以外で合理的な理由を挙げるのなら、大雅は、勉強は出来ないが頭の回転が速いのだ。
冬真はその点を買っていた。
一を命じれば十で返してくれる。いちいち指示しなくても、完璧に動いてくれる。
それが脅威になりうるときもあるが、その際は記憶を書き換え、操ってしまえばいいだけ────。
「目的のために取るべき策を考えるのが上手いんだよね。根っこの生えてる逆心さえ刈ることが出来たら完璧なのに」
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