第1話 11月4日

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 ゲーム……? と、小春は訝しげに首を傾げた。  連絡を絶ったことが、スマホのゲームか何かと関連があるというのだろうか。 「ていうか、ゲームとか絶対関係ないだろ」 「だよな」  同様の疑問を抱いたらしい部員たちは口々にそう言った。  しかし、蓮は神妙な表情を浮かべたまま何も言わない。 「蓮……? どうかしたの?」  堪らず小春は声を掛けた。はっと蓮は我に返る。 「ああ、悪ぃ……。心配だし、和泉には俺からも連絡してみる」 「うん、頼むわ。何か分かったらまた話すから。じゃあな」  手を振る部員たちに片手を上げ答える蓮。  去り際、会釈された小春は同じように返して彼らを見送った。  思わず蓮を見つめる。 「……何だよ?」 「……ううん、何も」  蓮は小春の飲み込んだ言葉に気が付いたものの、あえて聞かなかった。に言えることはないからだ。 「心配だね、和泉くん……。大丈夫かな」  小春は不安気に顔を曇らせる。  もしや、何らかの事件に巻き込まれたりしていないだろうか。 「……無事だと良いけどな」  ぽつりと蓮も呟いた。  既に和泉の身に危険が迫っていることを前提としているようで、胸騒ぎが増幅した。  何気なく窓の外に目をやった小春は、妙なものを発見した。 「蓮、あれ何だろう?」 「ん?」  二人して窓に寄る。  外はちょうど中庭になっており、芝生や木々が植えられ緑豊かな空間だ。  小春はその一角にある低木を指し示していた。 「手……?」  低木から生えているような形で、手を模した石像が置かれていた。  特にポーズを決めているわけでもない自然体の手だが、だからこそ手招きされているかのような不気味さがあった。 「ちょっと、行ってみよう」 「……マジか?」  奇妙な石の手に(いざな)われてか、小春は中庭へ足を向けた。  蓮は驚いたものの、特に反論せずその後を追う。確かにあれが何なのかは気になった。
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