第1話 11月4日

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 その一文以外はB級ゲームとしてままありそうだが、そこだけ妙に不穏な気配を孕んでいる。演出の一部だろうか。  しかし、興味は抱いてもプレイには踏み切れず、小春は画面を閉じようとした。 「あれ……?」  戻るアイコンをタップしても反応しない。  ホーム画面にも戻れなければ、何故か電源を切ることも出来ない。  画面は奇妙なメッセージを表示し続けた。だんだんと恐怖心が膨らんでいく。  ウィルスにでも感染したか、乗っ取られてしまったのではないか。さっと青くなる。  次の瞬間、画面が暗転した。  小春は当惑したまま、不自然な挙動を繰り返すスマホを見つめることしか出来ない。  程なくして、勝手に再起動されたスマホは正常に戻った。 「良かった……、びっくりした」  安堵の息をつき、ロックを解除する。  しかし、ほっとしたのも束の間だった。  ホーム画面に羅列するアプリの中に、見慣れないアイコンが増えていた。  黒地に白い五芒星。名称は“ウィザードゲーム”。  小春の表情が強張る。  強制的にアプリがインストールされたとでも言うのだろうか。  慌ててアイコンを長押しし、アンインストールを試みた。  しかし、削除を意味するバツ印が出ない。  設定アプリを開いたが、何故か削除ボタンが選択不可となっており、アンインストールは出来なかった。  アプリストア内では、そもそもこのアプリが見つからなかった。 「何なの……?」  怖いような薄気味悪いような情動に駆られる。明らかに異常な状況に陥っている。  もう見なかったことにしてしまいたかったが、意思と感情は時に連動しないもので、指先はアイコンに触れていた。  アプリ自体はかなりシンプルで、BGMもなければ効果音もなかった。  最下部に小さく何か書いてある────“トーク画面及び本アプリの画面を他者と共有した場合、ペナルティが与えられます”。 「…………」  魔法をコンセプトにしているからか、ページ全体が三日月や星などで煌びやかに装飾されている。  だが、ゲームと言うには粗末な作りだ。  画面は一つしかなく、下部にスロットのようなものがあった。  五個の空洞があり、何かを保存出来るようだ。セーブデータ用だろうか。  そのスロットの上、画面の大部分を占めているのはガチャとやらだった。 「魔法ガチャ……?」  凝ったフォントで“魔法ガチャ”と書いてある。  その文字の下には説明も記載されている。小春は文字を目で追った。 【毎日23時59分に回せるよ! ・必要消費アイテム ①四肢 ②臓器 ③その他身体部位 ④??? 好きな番号を選んでね〜! 何が出るかはお楽しみ。 そして、何を失うかも…】
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