第9話 11月14日

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「ま、でもやるしかねぇよ。無謀でも、何も出来ず犬死になんてしたくねぇからな」  蓮は躊躇うことなく小春の主張に同調した。  小春の言葉だからという理由だけでなく、その意見には大いに賛同出来る。  また、理不尽を強いてくる身勝手な運営には、一矢を報いなければ気が済まない。 「うん、俺も賛成。きっと何処かには同じことを考えてる魔術師がいると思うし、仲間がいれば倒せる可能性はあると思う」  奏汰は右手を挙げつつそう言った。  真剣な表情を湛えていた琴音は「そうね」と呟く。 「簡単じゃないでしょうけど、だからって諦めたら負けだわ。自分勝手な運営に屈するのは癪ね」  それぞれの出した結論を聞き、アリスは吟味するように黙り込んだ。  運営を倒すなど、どう考えても現実的ではない。  現状、運営に関する情報は何もない。しかし、十二月四日という期日は着々と迫ってきている。  情報屋を名乗るアリスでも、さすがに魔術師全員を網羅して把握出来ているわけではないため、慧の言葉には揺れてしまう。  無茶だとは思うが、人数がいれば、協力し合えれば、確かに運営側を倒すことも出来なくはないのかもしれない。 「あーもう、分かった! あたしも賛成するわ。こうなったら絶対に運営側を倒す」  半ば自棄(やけ)になったように言ったが、投げやりになったわけではなかった。  迫るタイムリミットへの焦りから愚かな選択をしているとしても、それが正解だと信じて動くしか、アリスにはないように思えた。  純粋に自分や仲間を守りたい小春とは異なっていても、この際目的は同じである。 「ありがとう、皆……」  小春は噛み締めるように言った。  正直なところ、真っ向から拒絶されることも覚悟していたのだが、全員が認めてくれた。 「そうなると、やることは大きく二つね。魔術師の仲間を増やすこと。そして、運営についての情報を集めること」  琴音が二本の指を立て言った。各々が同調するように頷く。  しかし、ひとまず登校時間が迫ってきていた。  敵は何も運営側のみではないのだ。少なくとも今は、普段通りを心がけておかなければ。 「一旦帰らねぇとな」 「そうだね。……あ、教室の窓割っちゃったのどうしよう」 「心配すんな、大して問題にはならねぇよ」  魔術師による殺人同様、魔法によって生じたことは、皮肉にも運営側のお陰で取り沙汰されることはない。 「それより、あいつらはどうする?」  蓮は、意識を失ったままの大雅と瑠奈を指して問うた。  二人にかけられた術が解けるのは昼頃で、まだ数時間はある。  ここに放置しておけば、目を覚ますなり縛られていても琴音を殺しに行くかもしれない。
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