第9話 11月14日

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「僕が見張っておく」  慧が名乗りを上げた。適任と言えた。  夜中にそうしたように、彼の魔法はスタンガン代わりになりちょうどいい。  万が一、術が解ける前に目を覚ました際には、再び電流で眠らせておくことが出来る。 「私もここに残るわ」  決然と琴音は言った。 「私のせいでこんな大変なことになったんだし、もし学校へ行ったら、そこへ危険なこの二人を呼んでしまうことになる。私がここにいる限り、この二人もここから動かない。だから残るわ」 「琴音ちゃんのせいってわけじゃ────」 「それでもよ。望月が対処出来なかったときの保険」  小春にそう答えた琴音は微笑む。  慧が不服そうな表情を浮かべた。 「舐められたものだな。誰のお陰で今、全員無事だと思ってる」 「感謝はしてるわ。皆にね」  仲が良いのか悪いのか分からない二人ではあるが、意思は一致しているため、大雅たちの見張り役は慧と琴音に任せることとなった。  大雅たちの術が解け、安全を確保出来次第、二人も登校するとのことだ。  瑠奈のステッキは、小春が預かっておくことにした。  その場で解散した慧と琴音以外の面々は、一旦帰路についた。  小春は家の前まで来ると、パーカーに触れる。 「これ、蓮のだよね? 借りた覚えないんだけど……」  戸惑いを見せる小春。蓮は「あー」と思い至る。  これを貸した段階では、彼女は大雅に操られていたのだ。 「でもありがとう。あったかかった」  小春は小さく笑い、脱いだパーカーを蓮に返却した。  このお陰で風邪を引かずに済んだ。 「……おう」  蓮は差し出された自身のパーカーを受け取る。  何だか自分のものではないような気がして、くすぐったい気分になる。 「じゃあまたあとでね」  手を振りつつ家の中へ入って行く小春を見送ると、パーカーを抱きつつ蓮も自宅へ向かった。 *  慧と琴音は、それぞれ反対側の石柱に背を預け、向かい合うように座っていた。   「良かったの? 学年トップのあなたが授業サボって」 「問題ない。その程度の遅れならすぐに取り返せる」  慧の強気な言葉に、琴音は微笑を湛えつつ、ココアを飲んだ。  彼が見張り役を買って出た真意は、その言葉通り雷撃魔法が有用であるためか、あるいは当初から魔術師である事実を共有していた琴音に仲間意識や情が芽生えたためか。  一匹狼が悪いとは思わないが、少なくとも以前より、彼は人に優しくなった。  仲間と関わるうちに、慧にそんな変化が起きていることに琴音は気付いていた。  前までの慧であれば、大雅はともかく瑠奈のことは躊躇なく殺害していたことだろう。  ……それは、琴音にも同じことが言えた。
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