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「運営側か……」
不意に慧が呟く。
小春の言葉を受けてから、頭の中でずっと考えていたのだろう。
「どうしたものかしらね。検索も出来ないし、アプリ内にも情報は皆無」
「ああ、まるで実態を掴めない。会うことも可能か分からないのに、どう倒せばいいと言うのか……」
さすがの慧でも困苦を滲ませた。
しかし、その言葉がすべてである。運営側を倒す、という意見には同意だが、その手段がまったく思いつかない。
琴音はわずかに考え込み、はたと顔を上げる。
「佐伯の言ってたことがヒントかもしれないわ。同じことを考えてる魔術師を探すの。運営を倒したいと思ってる、同志を」
このゲームも運営も、まだまだ謎が多い。
彼または彼女であれば、こちらの知らない何らかの有益な情報を持っているかもしれない。
「……そうだな、それが最善だ」
仲間を増やし、情報を得る────二つの目的を同時に果たすことが出来る。
「…………」
ふ、と大雅は目を開けた。
微かに誰かの話し声が聞こえる。慧と琴音だろうか。
身を捩り、拘束を解いた。
声をかけようとした瞬間、頭の中に冬真の声が直接響いてきた。
『大雅』
目が覚めたことを見計らって、というよりかは、定期的に声をかけ意識の有無を確認しているようだ。
無視してやりたいところだったが、冬真が“答えろ”と命じたため、応じる他になかった。
本来、冬真は大雅と異なり、脳内に直接語りかけたりすることは不可能であるため、命令は直接言うしかない。
ただし、テレパシーのやり取りが出来る大雅に限り、テレパシーからでも命令を下すことが可能だった。
(何、だ……)
『意識のない振りをしたまま、今起きてることを報告して』
大雅は奥歯を噛み締めながらも、頭の中で言葉を返す。
(琴音殺しは仕損じた。俺と瑠奈は気絶させられて、拘束されてる)
『相手は何人? 何処にいるの?』
(今は二人。場所は────)
大雅の意思とは関係なく、冬真からの問いかけにすべて正直に答えてしまう。
居場所を聞いたということは、ここへ来るつもりなのだ。
「まずい、お前ら……!」
大雅は声を張った。慧たちは、はっとして大雅を見やる。
ここに冬真が来る。
そう言おうとしたが、不意に声が詰まった。
『口を閉じて眠れ』
がく、と力が抜ける。
冬真からの命令に、大雅は再び気を失ってしまった。
無論、冬真にこちらの状況は見えていないが、律の不完全な記憶操作が解けた可能性を考慮し、念のため先回りしての命令だった。
「桐生……?」
琴音は眉を寄せる。立ち上がり大雅に歩み寄ってみるが、彼は深く眠ってしまっていた。
いったい何が起きたのだろう。
何を言おうとしたのだろう。
不穏な予感を抱き、慧の表情も硬くなる。
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