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「どうしたというのだ、変に改まって」
「いえ、ワダツミ殿も気付いていらっしゃるとは思うのですが...」
「...アイツの霊力が大きくなっている事か」
風で髪に張り付いた桜を手で払う。
「はい...ここへ来た時より明らかに大きくなっています。ワダツミ殿と一緒にいれば手を出す者も居ないとは思いますが、しかしアキラ殿はまだ幼く、もし何かの拍子に一人になる事があれば成す術もなく...」
「...へぇ、ありゃぁ生まれつきのじゃあないのか」
「ここの住人に関しては気心も知れているので大丈夫ですが、やはり私より力の強い者、特別な力を持つ者は無理矢理出入りできてしまうのです。...ワダツミ殿に結界を張っていただければ前者は問題ありませんが、これは単純な結界ではなく、私の家に代々伝わるモノで、術者によって性質が変わってしまうと此処にどのような影響が出るか分かりません...。それに、ワダツミ殿は結界に力を使ってしまい万全で戦うことはできません...」
「まだそんなに深刻になる事でもねぇだろ。だが、今後まだアキラの霊力が大きくなるならヤバいかもな」
「そうなってしまっては遅いのです...早めに手を打たなくては」
「うむ、確かに...アキラがここへやってきた時、黒龍がアイツを狙っていた。最悪の事態を想定するべきかもしれんな。...と言うか、結界を張らなければいい話なのではないのか。そうすれば誰も入られまい」
「...事はそう単純ではないのです。この神域は現世と常世の狭間、現世との繋がりを絶てば、生命力を循環させる事が出来ず、土地は死んでしまいます。そしてなにより、常世と同じになってしまえばアキラ殿がどうなってしまうか...」
海雲は額に手を当てて考え込む。
「まぁ、今の所はそんなに切羽詰まってる訳じゃぁねぇんだから、まず俺の式神を付ける。これで大概の妖は大丈夫だ。ただ、さっき言った通り、今後まだアキラの霊力が大きくなるなら、しっかりお前が守ってやらねぇと、どうしようも無くなるかもしれねぇぞ。大きくなればなるほど、多くの妖が狙いに来る。言葉が悪いが、アイツはあやかしから見れば一切抵抗もできない甘美な餌なんだからな...」
方代の台詞で一気に空気が重くなる。(言い過ぎちまったな...)と思った方代は苦し紛れに「...ま、まぁ、それまでに現世に帰れりゃぁいい話だがな」と言った。
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