僕、ほつとかれたんや。

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妻が娘達と一緒に、ホットカルピスを持って来てくれた。 「この猫、とってもお利口さんなんだよ。 何も教えなくてもトイレで、キチンとするし。 きっとどこかで飼われていたんだようね。 いったいどうしたんだろう」と、言うと、少年は、 「僕と一緒 ほっとかれたんや」と、悲しそうな顔をした。 少年には、何か事情があるんだろうなと思った。 「ところで、君は、この猫をどうしたいのかな? この猫、飼いたいの?」と、聞いてみると、少年は、しばらく黙っていた。 そして、意を決したように 「飼いたい」と、小さな声で言った。 妻は「そうか。 やっぱり飼いたいんだね。 じゃあ、お父さん、お母さんにお願いしてみようか!」と言うと、 「お父さんも、お母さんもおらへん」と言った。 僕と妻は、顔を見合わせた。
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