ごめん、ゴン太、約束守れそうにないよ。

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母が退院するという日 僕は急いで学校から帰った。 家に帰るまで、僕の人生で 一番うれしい日が来たと思った。 でも、家に帰ると その夢は打ち砕かれた。 母が亡くなったのだ。 僕の頭の中が真っ白になった。 何もできなかった。 現実を受け止めることが出きず 自分の母なのに、 葬式にも行くことが出来なかった。 僕は、部屋の隅でゴン太を抱きしめ 部屋の中に籠った。 ゴン太は何も言わず 僕のそばにいてくれた。 小さな白い箱に入ったお母さんが 家に帰ってきた。 僕は、膝の上に乗せたゴン太を優しくなでた まるで、母が僕を撫でてくれた時のように。 すると、心が落ち着いた。 そして、友達が言っていた、 ある話を思い出した。 「もしも人が死んで、まだ、 この世に心配な事があると その人は天国に行けないんだ。 だから、心配事がないように この世に思い残すことが無いように、 残された人は、明るく 過ごさなくちゃいけないんだよ」 僕は、袖で涙を拭き 「ゴン太、僕は、もう泣かないよ 泣いたらお母さん、 天国に行けなくなっちゃうもんね。 泣きそうになった、ゴン太、僕を叱ってね」 と言って、僕は、勇気を出して、 笑顔で小さな白い箱にはいってしまった 母に所へ行った。 ドアを開けると ゴン太は、僕の足元をすり抜けるように、 母の置かれたテーブルの上に前足を載せ 小さく「クーン」と鳴いた。 もしかしたら、微かに母の 匂いがしたのかもしれない。 寂しかったのは、僕だけでなく ゴン太も寂しかったに違いない。 そして、ゴン太は、「お母さん、お帰り」と いうようにニャーンと鳴いた。 僕も「お母さん、お帰り。 僕は、寂しくないよ。ゴン太がいるから」 と、言って、手を合わせた。
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