ごめん、ゴン太、約束守れそうにないよ。

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僕には好きなことがあった。 家の家の前を走る赤い電車を ゴン太と一緒に眺める事だった。 電車が通過する際に、運転手さんに手を振ると 「ファン」と、警笛を鳴らしてくれる運転手さんもいた。 「ゴン太、僕は、あの電車の 運転手になりたいんだ もし運転手になったら、この窓から 僕の運転する姿、見てよね」と、言った。 秋の日の夕方、いつものように 窓から電車を眺めるために窓を開けると 微かにいい匂いがした。 それは、母が庭に植えた金木犀の甘い、香りだった。 僕は、ゴン太の横顔を見た。 ゴン太の丸い大きな目には夕日が映り、綺麗だった。 そして、ゴン太も金木犀の香りを 楽しんでいるようで 鼻がぴくぴく可愛らしく動いていた。 「ゴン太、これ、お母さんの 好きだった香りだね きっと、お母さんも天国から、 この香り楽しんでいるかな。 いけない、いけない、 悲しい顔しちゃだめだね。 お母さん悲しませちゃいけないね。 ゴン太のお陰で、僕は、笑顔でいられるよ 悲しい、いやなことがあっても ゴン太が膝の上にきてくれて 撫でていると、世の中のいやなことは どうでもよくなっちゃうよ。 本当にありがとうね」と、僕が言うと ゴン太も僕の顔を見上げて 「ニャ!」と返事をしてくれた。
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