ごめん、ゴン太、約束守れそうにないよ。

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ゴン太が亡くなって初めての 秋がやってきた。 庭の金木犀の花が咲き いい香りが部屋にまでしてきた。 この香りは、僕に母と ゴン太を思い出させた。 少しつらくなった僕は、妻を誘い、 散歩に出かけた。 すると、いつの間にか ゴン太と出会った公園に来ていた。 僕は、妻に 芝生の中にある一つのベンチを指さし 「あのベンチが、ゴン太と初めて会った 場所なんだ。座っていこうか」と、言った。 ベンチに座ると ゴン太と出会った日の事を思い出し その時の話を妻に話した。 妻は、私の話すの横顔を見ながら クスッと笑った。 「あなたは、ゴン太君の事を話す時は 本当に楽しそうに話すのよね」 僕は妻の顔を見て 「そうか?でも、そろそろ、 ゴン太の物、処分しようかと思ってる。 ゴン太の物を見ると、 ゴン太との約束、守れなくなりそうだから」 すると、妻は、空を見上げるようにして 「約束守れなくてもいいんじゃなかな あなたは今まで、色々な事を我慢しすぎよ お母さんの事も、ゴン太君のことも 泣きたいときは思いっきり泣いても いいんじゃないかな。 ゴン太君もきっと許してくれるわよ」 と言った。 僕は「いいかな、ゴン太、ごめん 約束守れそうにないよ」と言うと 涙が目から溢れ出し 妻の肩にもたれかけ、 何はばかることなく泣いた。 妻は、僕の頭は優しく撫でてくれた。
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