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知恵マジック
「お母さん!」
私は駆け寄り、肩を揺すった。掌に柔らかい感触がある。重みがある。温もりがある。
「お母さんっ、生きてるの? 起きて! 起きてよぉ」
すると、歳を取ったお母さんが、がばりと起き上がり、私の知っている笑顔を振りまきこう言った。
「じゃじゃぁん。お母さんは生きてまぁす。友恵マジック!」
震えながら下唇を噛み、私は口を結んだ。紅潮する頬につられ、必死に込み上げるものを堪えたが、それは勢いよく目から溢れた。
「もう! お母さんったら」
私はふっと息を吐き、肩を下げた。
「おいで、あかりちゃん」
正座を崩した格好で床に座るお母さんは、両手を広げた。小学生に戻ったように、あ母さんの懐へ巻き付き、ギュッした。お母さんは、私の頭を撫で、とても優しく染みる声で「おかえり」と言ってくれた。子供のように声を出し泣いた。
私は二十四年前から、この言葉をずっと探していた気がする。霊道解禁のおかげで、やっと聞けた。神様、閻魔様──ありがとう。
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