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夏秋は、茫然としながら魔法少女を見ていた。
——俺と同じ高校生ぐらいかな……ってなに真面目に分析してるんだ僕は。
すぐにポケットからスマホを取り出し、写真の画面にする。
カシャっ。
と、シャッター音が響き、夏秋はすぐさま写真を見る。
——なんだこの顔。
いや、アイドルみたいに可愛い顔をしているツインテールの女の子。
なんだけど、こっちを向いているわけで……。
そして、その顔はやっぱり可笑しくて。
「こらキミ、勝手に人の写真を撮るのはダメなことなんだよ」
「わあああああああ!」
さっきまで、昼なら雲が見えるであろう高さぐらいを飛んでいた魔法少女が、気付けばステッキを片手に夏秋の前に立っていた。
「ごめんなさいごめんなさい」
夏秋は、魔法少女の頂上的な力を前に萎縮してしまう。自分を殺す道理が彼女になくとも、問答無用で危機を感知していた。
「ま、許してあげるよ、魔法少女だもんね。そりゃあ写真ぐらい取るよね」
「あ、はい」
夏秋は、魔法少女の友好的な態度に思わず素直に応えてしまう。
「あ、ジュース私も飲みたい! というか、実を言うとジュース目当てで降りてきたんだ! 写真のお説教をついででさ!」
未だに放心気味の夏秋の手からキャップが空きっぱなしのコーラをごく自然な流れで問って、ごくごくと喉に流し込む魔法少女。
「くーっ! しみますなー!」
魔法少女らしからぬ言葉遣いに呆気を取られたというのもあって、未だに何も言うことができない。
「ありがと!」
「あ、はい」
夏秋は、未だに現状を把握できない顔でコーラを受け取る。
「あの……」
夏秋は、思考が停止しながらも、素朴な疑問を口にした。
「写真を撮る間際、なんで変顔したんですか?」
「だって、真顔を撮られるのってちょっと恥ずかしいじゃん!」
実際恥ずかしそうにするでもなく、彼女の笑顔は無邪気な少女のそれで。
下手くそな変顔だけに、更に少女の愛らしさを際立たせた写真が、フォルダに残ったのだった。
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