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「あ、やばい警察! もしかすると私狙ってるのかも!」
サイレンがなっているあたり、本気で捜索されているっぽい。
「ほら、夏秋くんも乗って!」
ほうきに跨って、夏秋にそう言ってくる制服姿の魔法少女。絵面が夏秋の知っている魔法少女と全く違っていて、しばらく反応できない。
「早く!」
「あ、うん」
気付いた時には反射的に乗っていて、乗せられていた。
「いくよ! 積乱雲も乱層雲もぶっちぎっちゃうよ!」
「…………」
「なんか言ってよこういうところで言っとかないと学校で習った意味ないんだから!」
とか言いながら、風圧付きの瞬間移動のごとく、ここがどこら辺の真上にいるのか視認できない高さまで上昇していく。
ごぉーっという風の音だけが耳の中に入ってくる。
「凄い景色でしょ!」
夏秋は、山の頂上から見るより遥かに高い景色に感銘を受ける——でもなく。
「暗くて何も見えない。家もこの時間だし、電灯ついてないみたいだし」
「んー? あ、ほんとだ」
——いや、見てから言ってよ。
夏秋は徐々に思い始める。
なんか、勢いでこうなったはいいけど、途轍もなく面倒なことに巻き込まれているのではないのかと。
「それで、僕をここに連れてきた理由は?」
どこかの方向へ進み始めたステッキに跨り、陽菜の背中に問うと。
「気分だよ!」
「気分?」
「っていうのは建前で~」
「いや、建前にもなってないから」
「一人で寂しいから話し相手が欲しいと思って」
——ステッキに乗って空を飛ぶなんて経験とても貴重なはずなのに、どうして残念な気持ちになってるんだろ。
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