ホワイトニング

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「この異形は……獣じゃないか! 一体どうして……」  鏡の中には、ほとんど野獣と言っていい姿が映し出されていた。 「生まれ変わったのです。古い肉体を捨てて。月と闇と共にある姿に」 「生まれ変わっただって?」  大きく声を発した途端にミシミシと軋む音がして、全身に針を刺されたような痛みが走り、皮膚を突き破る銀色の毛が肌を覆った。  上下の顎の骨が外れて口が耳朶の下まで裂けて開いた。  白を超えて透き通る歯が獣の牙と化した。  瞼が捲れ眼球が迫り出す。  生え変わったパーツで感じる夜の風と色。  顎を持ち上げると太陽と紛う巨大な赤い月が、覆い被さるように目前で燃えていた。  彼の側には影の他に男がもう一人。   「これから生まれ変わった肉体で世の中を真っ赤に染めてきましょうよ」  彼を誘う、その男の口調が懐かしい。  針金のような体毛が赤い月光を弾いていた。  生まれ変わる前は何だったのか。  過去はすっかり白くなってしまった。  だから、今度は赤く染める。  三頭は月に向かって吠えた。  
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