プロローグ

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プロローグ

「お願いだから、今日は帰って。」 そう言って儚木(はかなぎ)いとは部屋を出た。 むしゃくしゃしていた。(つかさ)の顔を見たくない。今すぐにでも涙が溢れそうだった。大人気ないのはわかっている。 司が何故ここに来たのかも、自分が一番よくわかっている。 心配してくれた。そんなことも、彼の顔を見ればわかる。 電気ポットに適当に水を入れてセットする。しばらくするとカチッという音が鳴りお湯が沸いた。カップにインスタントコーヒーの粉とお湯を入れる。落ち着く薫り。俺みたいな馬鹿舌にはこれで十分だ。むしろちゃんと挽いた豆で淹れたコーヒーよりも好きまである。ちゃんと挽いたコーヒーは、少し苦手だ。
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