6人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ
「お願いだから、今日は帰って。」
そう言って儚木いとは部屋を出た。
むしゃくしゃしていた。司の顔を見たくない。今すぐにでも涙が溢れそうだった。大人気ないのはわかっている。
司が何故ここに来たのかも、自分が一番よくわかっている。
心配してくれた。そんなことも、彼の顔を見ればわかる。
電気ポットに適当に水を入れてセットする。しばらくするとカチッという音が鳴りお湯が沸いた。カップにインスタントコーヒーの粉とお湯を入れる。落ち着く薫り。俺みたいな馬鹿舌にはこれで十分だ。むしろちゃんと挽いた豆で淹れたコーヒーよりも好きまである。ちゃんと挽いたコーヒーは、少し苦手だ。
最初のコメントを投稿しよう!