0人が本棚に入れています
本棚に追加
少しずつ貯めた金で、少年は魔術を専門的に学ぶ学校へ進学した。彼は難しいとされる入学試験で、合格するには充分な程に才能を発揮した。そうして、少年は寮のある学校で、安らかな時を過ごし始めた。
学校には、少年の心を乱す存在は居なかった。少年の魔力は、様々な試験を易々と突破した。少年の知力は、様々な面で活躍した。そうしている内に、少年は学校に退屈し始める。
優れていたが故に退屈した少年は、学校の授業で学ぶ以上のことを求めた。彼は、学校を抜け出しては年齢を偽り、賭場に入り込んだ。そうして、彼は魔術研究の為の資金を手に入れ、様々な専門書を手に入れた。
少年は、時に危険な場所へも入り込んだ。賢い少年は、気配を消す魔法を使いながら治安の悪い場所も歩いた。彼は、どうしても交渉が要る時にだけ姿を現し、様々な魔術に関する商品を手に入れた。
危険に直面した時も、少年には魔法が有った。少年が呪文を唱えさえすれば、彼は一瞬で学校の寮へ戻ることが出来た。
少年は、危険を避ける為、見た目を変える魔術について調べ始めた。彼の見た目は、余りにも他者を威嚇するには向かなかった。彼は周囲に敵を作らぬ様に生きてきた。その習性が、時にあだとなった。
少年は、危険な街に出る時にだけ、自らの見た目を体格の良い強面に変えた。その魔法は体に負担掛かり長く使えなかったが、学校を抜け出せる時間を考えれば充分な余裕があった。
そうして、少年は学校では学べない悪しき魔術を独自に学び続けた。少年は部屋に隠しやすい動物を捕らえては実験をした。少年は魔法の効果の実験に動物を使い、魔法薬の効果の実験にも動物を使った。
彼の実験で多くの動物が犠牲になったが、その遺体は発見されることは無かった。彼は、遺体になるより前に、人の立ち入らない洞窟に動物を逃がしていた。その洞窟は、人間が立ち入るのは余りにも危険だった。また、小さな体の動物が生き延びるには厳しい環境だった。
少年は、敢えて最奥にまで実験に使った動物を離し、その後をも観察した。多くの動物は直ぐに弱り、次の日には事切れていた。しかし、中には死肉を喰らってでも生き残る個体が居た。彼は、その逞しさに笑顔を浮かべ、何度も動物を洞窟に放った。
そうこうしている内に、少年は人間で実験を試みたくなった。しかし、それは叶わなかった。少年は人間を閉じ込めておく場所を持っておらず、人間を攫うにもリスクが大き過ぎた。
実験を繰り返す内に、彼は不死の魔術を復活させた。飲まず食わずでも生き続ける個体を何体も作り上げた。この時、彼は既に人生らざるものと化し、肉体に宿る魂の有無が認識出来る迄になっていた。
どんな生き物も、死ぬ時に魂が肉体から分離する。その説は広まってはいた。しかし、魂の存在場所を認識出来る人間は居なかった。それを認識出来る者は、魂を喰らう魔族だけとされていた。
少年は、徐々に不死の魔法を極めていった。だが、体が朽ちると共に魂までも脆くなる問題だけが解決出来なかった。入れ物の無くなった、入れ物に収まることの出来ない魂は、繊細な硝子細工の様に脆かった。
少年は、脆くなった魂を保つ為、様々な実験を試みた。しかし、それは中々上手く行かなかった。その内、少年は魂の質を変える為の実験を始める。
生き物に与える物を個体毎に変え、沢山の物を与えるか、殆ど何も与えないかで比較を繰り返した。その実験を繰り返している内に少年は一つの仮説に辿り着いた。
最初のコメントを投稿しよう!