慣れてきた仕事

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 俺は慣れた手つきで仕事道具の確認をする。  道具が1つに、それと一緒に使う消耗品。  さっき使ったので、消耗品は2個減っている。  家にあるストックを確認し、補充した。  ストックの方も、だいぶ減ってきた。  いい加減、必要な分をもらう必要があるな。  俺はさっきの仕事を思い出す。  耳をつんざく音、倒れる音、液体。  哀れみを乞う目、その後の一転、戸惑いの目、さらにその後の恨みがましい目。  始めたばかりの頃は、思い出して夜、眠れない日もあった。  ああいうことをした後は、眠れない方が正常なのだと思う。  でも、俺はもう、気にも止めない。  仕事をし、危険を切り抜け、金をもらう。  それだけだ。  淡々とラインに立ち、仕事をこなし、金をもらう。  ライン工と同じだ。危険で、金の額が大きいだけだ。  良心というものがなくなっていくのを感じる。  もはや消え失せたのかもしれない。  いや、こうして考えているぶんだけは、あるのかもしれないが。  仕事に染まり、感情が薄くなった。  俺は顔を洗った。  洗い終わったところで、チャイムが鳴る。  ドアを開けた。  黒い筒を俺に向けている男がいる。  パンと音がする。  俺は倒れた。  いつかこうなると思っていた。  驚きはない。  殺し屋にはふさわしい末路だろう。  うすれゆく意識の中で、俺は、朝飯だけは先に食べておけばよかったと思っていた。
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