晩餐会の始まり

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晩餐会の始まり

 ペタペタ、ペタペタ。 『ねぇ、小説って知ってる?』  ショウセツ? なにそれー。  しらなーい。  しょーせつってたべれるの? 『人間が書いた物語のこと。小説を書く人を小説家って言うんだ』  へー。  ねーねー、おなかすいたー。  ごはんたべにいこーよ。 『もう、僕の話を聞いて! 昨日ね、老衰で死んだおじいさんの魂を食べたんだ。彼は小説家だったの!』  ふーん。で? 『小説家の魂はね、特別な味がしたんだ! 普通は経験したことが味になるけど、たくさんの物語を書いてるからなのかな? あまーい部分とにっがーい部分、辛いところもあった。一度の食事でたくさんの味が楽しめるんだよ!』  ……いいね、それ。  うん。あまいのもからいのもいっぺんにたべられるなんて、すてき。  しょーせつか、おいしそう! 『でしょでしょ!? だからみんな、僕と一緒に小説家の魂を食べに行こう!』  でも、ぼくらにはにんげんをころすちからなんてないよ?  しょーせつかのじゅみょーがおわるまでまつ? めんどくさい!  はやくしょーせつかたべたーい! 『大丈夫、簡単さ! 夢の中に入り込んでこう問いかけるんだ』  ――進捗は?  ペタペタ。    夢の中でこの足音が聞こえても、絶対に振り返ってはいけない。    ペタペタ、ペタペタ。    底が見えない深淵(しんえん)双眸(そうぼう)に、飲み込まれてしまうから。    ペタペタ、ペタペタ――……ペタ、ペタペタペタペタペタペタペタッ、ペタペタペタ、ペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタペタ、ペタッペタペタペタペタペタペタ――。
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