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10年後
「遼馬、待って。ここ見たいんだ」
彼は成田遼馬、彼女は神林 瑠夏。二人は高校からの同級生で大学も同じ。二週間前、瑠夏の告白から付き合い始めた。
瑠夏は遼馬の手を引きながら高級ブランドショップに入っていった。
「いらっしゃいませ、神林様」
瑠夏は大企業の一人娘。VIP席で優雅に新作バッグや洋服を選んでいる。遼馬は居心地が悪そうに高級ソファーに身を沈めていた。
「遼馬どお」
と何度も聞かれるが、よくわからないので
「似合うよ、良いよ」
だけしか言えないロボットみたいに、何度も繰り返していた。だが、瑠夏はすごく嬉しそうだった。
高級ブランドショッピングの後は、瑠夏が予約していた、高級ホテルのフレンチディナーを食べに行った。
「瑠夏、ちょっと豪華すぎ」
「えっ?ここ美味しいんだよ。あっ大丈夫、パパが払うから」
「そんなわけいかへんよ」
「いいの。いつもそうしてるんだし。私、遼馬とここで食事したかったんだ。ワインも飲もうよ」
遼馬は最高級ワインの値段が恐ろしかったが、瑠夏は気にすることもなくオーダーした。
「ママがね、遼馬君お食事に来てほしいって言ってるんだけど。次のお休み家に来てくれる?」
「えっ、あーでも」
「私たち真剣に付き合ってるだよね」
「うん、だけど、まだ」
「まだ、なに?」
「いや、なんか、緊張するから」
瑠夏は笑いはじめた。
「もーそんな深刻に考えないでっ。ご飯食べに来てってだけだし。じゃあ約束ね」
瑠夏は嬉しそうにステーキをほうばった。
俺なんかといてそんなに嬉しいのかな。
瑠夏の笑顔に応えるため、遼馬はたぶん笑顔になってるだろう。口元を歪めた。
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