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とある日、ハクはある施設の中庭に居た。それは街にある大きな病院。いつでも明るく楽しいばかりのハクの姿はそこにはなくて、華やかな庭園になっている中庭を神妙な表情で眺めている。
「ハク。お待たせ。ジンくんも終わったよ」
呼ばれた方にはカンサとジンが居る。最近はいつも一緒のエイバの姿は無い。
まだハクの表情は重くて二人が近付くと「どうだった?」と慎重な言葉を放つ。
「私は問題無し。今月も合格点でした」
カンサは心配しているハクを和ませるのも有ってなのか笑顔を見せていた。
そしてジンも「俺も」と言葉少なかったが、カンサと同じだと報告をしていた。
「全く、カンサがいつもより時間掛かってるから心配したんだから!」
二人を抱きしめながらハクは心から安心した表情をしていた。
「ちょっと、お喋りになっちゃって。本当にいつも通りで、道は進めてるよ」
心配させた事を悪いと思ってカンサが素直にあやまると「カンサが悪りぃ」とハクが文句を言い「気にすんな」とジンが話す。
もうその時には三人が笑顔になっていたので、それから普通に病院を離れる。
その時にカンサが遠くの廊下の人影を見て立ち止まったので「どうしたんだい?」と二人が振り返った。
「なんか、エイバが居た気がするんだけど。見間違いだね」
「そーだ。奴に病院なんて似合わない。健康だけが取り柄みたいだから。あたしらと違うんだよ」
ハクもこう言うしカンサもやはり見間違いだと気にしなかった。
だけど「ハクも今はもう似合わない」とボソッとジンが言うので、それにはハクがキックで返す。騒ぐので看護師に怒られてさっさと病院から離れる。
「そー言えば、最近さ。不届き者たちがいるんだわ」
今日は三人ともが部活を休んでいるのでのんびりと遠回りをして家に帰るので、ハクが暇つぶしの話題を見つけていた。
それは携帯の画面に有る学校のメッセージアプリの匿名アカウントだった。
「死にたい方歓迎。集団自殺を募集しています。お気軽に」
そんな文字が並んでいるのをハクが見せているので「悪趣味だな」とまずジンが吐き捨てる。
「そーでしょ。こんなのに賛同する人間なんて居るのかいね。全く世も末だよ」
軽くハクとジンは話す。ちょっとしたお喋りの話題だったのに「許せない」とカンサが怒っていた。その携帯の画面を睨み付けている。
「ちょっと、カンサ。落ち着きな。別にこんなのに関わらなくて良いよ。あたしらは静かにしていれば良い」
「私はそんな風に思えない。命を軽く考える人なんてだいっきらいだ!」
激怒しているのを察知してハクはこの話題が間違いだったと気が付いた。が、時は既に遅い。カンサは怒りを明らかにしているので、それからの帰り道は二人がカンサを宥めるばかりになっていた。
「どうだい? ちょっとは落ち着いたのかい?」
黙っているカンサは一言「許せないよ」と語ると学校へ走り始めた。
もうこれはどうしようもないので三人は手分けして、集団自殺の人たちを探す。
旧校舎の一角に人が集まっていた。
「ありゃ? もう実行されたのかい?」
しかし集団自殺の現場では直ぐに発見されて実行前だったみたいで、練炭の箱が転がって消火器が用意されている。
見物人になっている生徒たちを掻き分け現場を見ると、そこには集団自殺に参加したであろう人たちがまだそこに居た。その中にはエイバの姿が有った。
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