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どこまでも続くような広い土地と海がある街でみんなが暮らしている。人口はあまり多くないが街の中心には大きな白い病院があって、そこを取り巻くような世界になっている。そんな街の高校に彼らが居た。
「こんな天気良いからよ」
高校の昼休みに屋上で昼寝をしようとしている人が居る。その言葉使いは荒っぽいが、見た目は違う。背の低い女の子でベンチに転がってあくびをしている。
「ハクはいつだってそんな事を言うんだから」
そして横ではサンドイッチをちまちまと食べているこちらも女の子が居る。見た目もおとなしそうで声だって細い。
「カンサは細かいことを気にしすぎだって、こんな天気に昼寝をしないと人生の損だよ。あたしらは損しちゃダメなんだい」
ハクと呼ばれた女の子が返すが、本人も眠ってしまう雰囲気ではなくて、今も起き上がるとカンサと呼ぶ女の子に抱き着いていた。
この場に居るのは二人だけではない。背中合わせになっているベンチでノートほど有る弁当を食べている男も居る。
「ってか、ジンもこんな時はお喋りに加わりなさいよ。人生を謳歌しないと損だよ」
よっぽどハクは損をしたくないのだろう。こんな風景はいつものことだった。
そしてジンは「別に、良いだろ」とボソリと一言だけ返す。声は普通だがその体格はがっちりしていて、身長も高く鍛えられている。その理由は野球部員で毎日必死な練習をしているからだった。
「暇だ」「また始まった」「ハクには呆れるね」
実際のところ損をしそうなのはハクで、楽しいことが三度の飯よりも好きなのだが、そんなに面白いことなんてその辺に転がってなんてない。だから、お喋りとなるとこんな事を言うのだった。
「ねーぇ。コイバナとかないのー?」
まあ高校生が集まるとそんな話は尽きないだろう。でも、返事をする人間は居なかった。一応カンサは「そうだね」と考える返事をしていたが、ジンからは「無い」ときっぱりと言われてしまう。
「ホラ、地元が一緒だった子は昔のことも知ってるしね」
「告白を受けても事情を話したら断られる」
「二人ともさ、昔の事はあんまり気にしないで、テキトーに付き合っちゃいなよ。高校生なんだから気軽でも良いんじゃない?」
「それをハクが言うか?」
自分から話す事は少ないジンにキッパリと言われてしまった。
これだけの美貌を持っているハクも恋人は居ない。もちろん、その気高さから告白を躊躇される事も多いのだが、数少ない勇者の告白に「好きな人が居る」とハクも毎回断っていた。
「休み時間も終わるな」
ご飯の時間も含めていたので休み時間なんてもう簡単に終わってしまう頃になっていた。ジンが呟くと残る二人も教室に帰る。こんな日常が有った。
「ちょいとー! 重要事件だよ」
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