兄弟みたいなもの

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雪人(ゆきと)さんは遅い?」 「父ちゃんはどうせおせーぞ。なんだ、約束でもしてたのか?」 俺と天が参戦してから、餃子包みから離脱した兄貴がタバコに火を点けながら答える。 天はうーんと一つ唸った。 「会社のゲームくれるって言ってた」 俺の父親は良くわからないが商社勤めで、ちょいちょいゲームソフトを持って帰って来る。 しかも何故かギャルゲーばかり。 どうにも俺には向かないが、天は狙ったキャラは全部落とすんだそうで、どうやら何かの実験台にされているフシがある。 ゲーム上では顔面の効力はないだろうに、それでも女に困らないというのも恐ろしい。 「ゲームより勉強なんとかしろ。お前、このままだとまた赤点だぞ」 ちまちまと餃子を包みながら小言を言うと、天が小さく首を傾げる。 「……補講いっぱいだと……晴ちゃんと一緒に帰れない……」 「おう、だからなんとかしろ。勉強(そっち)は見てやるから」 真面目な会社員である父ちゃんの影響で、俺は兄貴と真逆に育った。 兄貴は勉強が向いていないと言って自由に生きて、俺は自由に生きるために勉強してる。 成績が残せれば教師も色々黙認してくれるし、ある程度の権力があれば多少の傘にはなってくれるから、生徒会なんてものにも入った。 「オレ、がんばるね」 「ん。頑張れ」 このふわふわの笑顔に、吉田に向けるような熱は見当たらない。 それが苦しくて、少し悔しい。 「あんた達はホント、仲がいいねえ」 呆れ気味に呟く母ちゃんの言葉が、棘のように胸の奥に刺さった。
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