糸屋の娘は目で殺す

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「晴? お前、まだ残ってたの?」 びしょ濡れの顔を上げると、色黒なツンツン頭が駆けて来る。 2組(同じクラス)の友人、小瀧 蓮(こたき れん)。 コイツとは1年の時に同じクラスになり、妙に馬が合って親しくしてる。 去年は天も同じクラスだったから、いまでも3人で昼メシを食う仲だ。 「タキ……この暗いのにまだサッカー部やってんの?」 「いや、自主練。次の大会、スタメンで起用してくれるってコーチが言うから。てか、お前ビショビショ」 タオルの端で俺の顔を拭う。 校庭の土臭さと、タキの日向の匂いがした。 「もう11月だぞ。風邪ひくって」 「んなもん大したことねえ……」 反論しようとしたところで、肩を強く引かれる。 いきなりの事で驚いていたら、見上げた所に天の顔が有った。 「天……?」 胸の前に腕が有る。 どうやら抱き寄せられたらしいと気付くまでには少し時間がかかった。 「あ……タキくん」 「天、お前ホント見境ないのな」 ぱっと天が腕を放すと、タキが青ざめた顔を見せる。 俺の心臓は壊れそうなくらい高鳴って、せっかく冷めたばかりの頬がまた熱を持った。 「ごめん、晴ちゃん。絡まれてると思って」 「バカ、絡まれてたら天は出てきちゃダメだろ」 喧嘩上等で育った俺と違って、天は大人しい。 荒事担当は俺の方だ。 「そんなん言えるの、晴くらいだと思う」 ぽつりとタキが呟く。
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