俺達の距離と終わったはずの恋心

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俺達の距離と終わったはずの恋心

初対面から10年を過ぎて、天のふわふわの長い髪はすっかり短くなっている。 あれは天の母親がヘアドネーションとかいう、病気や事故で髪を失った子ども達にウィッグを作る慈善活動に参加させようと伸ばしていたもので、あの数年後にはバッサリと切った。 この長い歳月で変わったのはモチロン髪の長さだけじゃない。 すくすく育った天は現在170センチ弱の俺の身長を追い越して、186センチの長身イケメン男子へと成長を果たした。 くるりと大きかった烟ったような瞳はやや眠たげになり、ふっくらと柔らかかった頬はシャープになった。 短くなった髪は無造作にふわりとその頬に掛かる。 線の細さと肌の白さはそのままだが、肩幅や二の腕は間違いなく男のものだ。 おっとりとした掴みどころのない喋り方は実はただのド天然なのだが、そこが可愛いと女子ウケし……大変モテる。 事実、今までに結構な人数の女子と浮き名を流し、いずれも短期間で別れている。 このぽけーっとした天にどこまでナニをしたのか問いかけても、どうにも要領を得ない回答しかなくて事実を知るのは歴代彼女達のみだ。 けれど変わらない事もある。 それは俺達の距離。 高校2年になった天の青みがかった瞳は、今朝も俺を約20センチ頭上から見下ろしている。 「晴ちゃん……オレ、今日また追試……」 「おま……俺は教えたよな? 教えた所、ちゃんとやったのか?」 大変優秀な外見とは異なり、頭の中身はあまり成長しなかった天は追試の常習者だ。 その逆でさほど優秀でない外見の俺は、学年トップの成績を誇っている。 だからこそせっせと勉強を教えてやっているのだが、こいつはテストになるとどうにもわからなくなってしまうらしい。
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