俺達の距離と終わったはずの恋心

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「やったけど、わかんなくなった……」 「どれ? ああ、世界史か……暗記系は特に苦手だもんな」 こくりと頷くと、しょぼんと肩を落とす。 「晴ちゃんと帰れない……」 「いや、生徒会あるから俺の方が遅いかも」 入学当初から先輩の薦めで生徒会事務員として活動させられていた俺は、昨年10月の選挙で生徒会長に任命された。 自主と自立をモットーとする我が校では、生徒会の立場は強い。 権力は握っておいても損はないだろ。 「待つ……待つから、一緒に帰ろ」 表情の乏しい天だけど、長く付き合えばわかることも多い。 でっかい仔犬みたいにじっと見る目は、とても可愛らしい。 いつものように頭を撫でると、柔らかい髪が指をくすぐる。 「ん。じゃあ4組(お前のトコ)で待ってろ」 「わかった」 これは嬉しい時のカオ。 ほわっと頬が緩むと、子供の頃の面影が覗く。 ついついこちらの頬も緩んでしまう。 「あ、ちょっと待って」 通学路の途中、橋の上で天はスマホを掲げる。 1枚シャッターを切って画面を覗くと、満足気な様子だ。 「今日は何撮った?」 「川。水がキラキラしててきれいだった」 水面に朝日が反射して眩しいくらい光っていて、キレイだ。 言われなければ気にも止めない、こういう小さな事に気付く。 これが天の良いトコロ。 「どうせなら写真部にでも……あ、去年廃部になったな」 「いい。好きなものだけ撮りたい」 ほわほわと自由人なのに、相変わらず芯は通ってる。 このしっかりした所が勉強に少しでも向いてくれたら、赤点は減るだろうに。
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