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「中学校からずっと。晴ちゃんは優しいから断りきれずに付き合っちゃうかも……でも、誰にも取られたくなかったから言わせない事にした」
しゅんと悄気げた天は視線を床に落とす。
確かに告白でもされたら、なんとなくで流されていたかも知れない。
それは優しいからなんかじゃなくて、天への気持ちを捨てようと必死だったから。
でも俺がモテるとは思えねえんだけど……考えを読んだように吉田が口を開いた。
「金髪ピアスのヤンキーもどきで根は真面目な生徒会長。なのに喧嘩させれば無双状態。属性てんこ盛りでせっかく人気あったのに、ぜーんぶ根こそぎ二宮くんに持っていかれてたの。そこで私も二宮くんの意図に気付いたってわけ」
「つまり吉田も俺に近付く女子としてロックオンされてたってことか?」
「そう。でも私は小瀧くんと付き合ってるし、一浦に興味もない。むしろリアルBLを応援したかったから、話を聞き出して協力することにしたの」
天と吉田の協力体制はそこから始まったらしい。
腐女子、怖え……
「ええと……後の条件は?」
「天が晴に告白しないことだ」
「直接告られた日にゃ、アンタはコロッと行っちまうだろうよ。だから伝えさせないことにしたのさ。そうすりゃカタブツの晴のことだ、男同士だからとかグダグダ考えてそのままだろ」
これで理解できた。
俺から言わせるために、吉田は天との仲を疑わせるような事をして揺さぶりをかけたんだ。
それも決定的なものを見せない事で、俺が完全に諦めるのを防ぎながら。
その上でノートに書かれていた詩みたいな言葉。
あそこには相手の名前も、『好き』とか『愛してる』みたいな愛の言葉もなかった。
あれならこの条件をクリア出来る。
しかもあの公園でも、天は自分の気持ちを『特別』としか言っていない。
強いて告白として言うならあの天気予報みたいなタイトル。
『明日は晴れますか?』という恐ろしく回りくどい、あれはこの条件に抵触しないための仕掛けだったということか。
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