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「わかった?」
「……わかった。確かに直情径行な天には思いつかねーわ」
晴れやかに笑う吉田が今回の陰謀の黒幕だってことも、全ては真っ直ぐに突っ込むことしか出来ない天のために知恵を出してやったということも理解できた。
恐らくはあの公園に誘導したのさえコイツの入れ知恵だろう。
昨日「兄弟みたいなもん」と言われて落ち込む天に、俺が約束を覚えているか確認してみろとでも唆したんじゃねえかな。
「超絶鈍感な一浦に気付かせるためにはこのくらいの事が必要だったのよ」
「恐ろしく遠回りで、さっぱりわからなかったけどな……ってか、天によくあんな演技させられたな」
あの教室での熱っぽいやり取りがなければ、俺は全く気にもとめなかったはずだ。
「演技じゃないよ。あのノートは二宮くんが一浦を想って書き溜めていたの。あの表情は普段言いたくても言えなかった積もり積もった気持ちを、そのまま一浦に伝えるつもりで言ってもらったってわけ」
「え……」
そういえば公園でキスする時に見えたあの熱の籠もった瞳。
日頃からあんな顔で俺を見てたって?
ウソだろ?
気付いてなかった事も恐ろしいけど、気付いてしまうと恐ろしく恥ずかしい。
ただでさえ熱のある頭が、湯気でも出そうなくらい沸騰する。
「天は目力すげーもんな。この間、晴の顔タオルで拭いてやった時も、殺されそうな目で見てて」
「熱出した時もそうだったよね。秋田くん、下まで連れてくの手伝おうとしただけなのに。可哀想なくらい怯えてたよ」
「だって、晴ちゃんに触られたくなかったから……」
秋田を睨んでたのはちらっと見た。
あれ、熱で見間違えたんじゃねえのか。
……天、俺のこと好き過ぎじゃねえ?
ダメだ、余計に熱が上がっちまう。
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