俺達の距離と終わったはずの恋心

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俺の首を締め上げながらきゃんきゃんと(わめ)く彼女は吉田 詩(よしだ うた)、生徒会副会長を務める同級生で、天と同じ4組だ。 肩までのボブカットがよく似合うなかなか可愛いタイプ。 平均身長よりやや小柄で、その割にムネがあるので男子からも人気がある。 まあ、真面目な世話焼きオカンタイプなので、口うるさいのが玉にキズだが。 で、これが年に3回程行われる服装検査のたびに行われる俺達の押し問答。 昨年、お互いに生徒会事務員になった頃からの恒例行事。 服装検査のたびに染めて脱色を繰り返してたら、毛根死ぬから。 ぜってーハゲるって。 だから吉田の要求に応えてやる気は全くない。 「吉田ぁ、あんま引っ張んな。首締まって、下手すりゃ殺人犯だぞ?」 ひょいとネクタイの端を取り返すと、握りしめられてヨレヨレになっている。 それをブレザーの中にどうにか収めて、襟を正した。 「晴ちゃんの髪は、お日さまの色。オレ、好き。きれい」 ほやーっと天が言い、吉田は頭を抱えた。 「二宮くんまでやらないでよ?」 「やらせねーよ、天の髪の色はこのままな」 俺がここまで派手にしてるのは元レディースの母と元ヤンキーの兄の影響……ではない。 影響を受けたのは喧嘩の腕前の方だけで、外見は関係ない。 金髪もピアスもモチロン似合うからというのはあるが、一番大きな理由は天。 これだけ目立って、しかも女の子入れ食いとなれば当然やっかむ奴も増える。 これはそいつらから天を守りつつ、自らの存在感をアピールするための武装なわけだ。 「せっかくキレイなのに勿体ねーだろ」 ついほろりと口から溢れる、終わったはずの恋心の欠片…… 「確かに綺麗、不思議な色だけど天然なんだよね。あっ、二宮くん後で例のやつね」 「うん」 チクリと胸を刺す痛み……俺はこの2人の秘密を少しだけ知っている。 知ってしまったから……終わったはずの恋心が疼いて、ここのところ少しだけ情緒不安定なんだ。
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