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目が覚めたらもう夜中で、頭の上に氷嚢が乗せられていた。
中身はもう水になっていたけれど薄ら冷たい。
ぼんやりした目をやると、テーブルランプの灯り一つの暗い部屋の中に天が居た。
ベッドに寄り掛かったまま、毛布にくるまって俺を覗き込んでいる。
寝惚けたままでしばらく見詰めて、俺は小さく尋ねた。
「…………家に帰らねえの?」
「虹子さんにお願いした。晴ちゃんが心配だから今夜はここで寝たいって。でも……やっと気持ちが通じたと思ったら、嬉しくて眠れない。起きたら夢だったらって思うと怖いし。だから晴ちゃんの寝顔見てた」
天の手が頬に触れて、なんだか心がくすぐったい。
すげーな、恋心って認識しちゃったらもうスイッチ入りっ放しなのな。
「ずっと言いたかった。オレは晴ちゃんが好き。大好き。晴ちゃんだけがずっと、オレの特別」
天の瞳が優しい。
大切なものを見る時みたいな、温かくて柔らかい視線。
スゲー幸せで、情けないけどそれだけで涙が滲んだ。
天の指がそれを拭う。
「俺にとっては、天が特別だな」
俺が言うと、近付いた天の唇が俺の頬に触れる。
柔らかい髪が耳をくすぐった。
ぎゅっと胸の奥が痛くて切ないのに、心のどこかがふわふわと浮き上がる。
天は俺の瞳を覗き込むように、宇宙みたいなおぼろに烟る瞳を近付けた。
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