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糸屋の娘は目で殺す
生徒会の活動が終わって4組の前に着く。
天は追試を受けると言っていたけど、思ったより時間が掛かってしまった。
途中で会った4組の担任によると、更に数学の未提出課題を追加したからまだそれを解いているだろうと言っていたけど……もう日が落ちて暗いというのに電気が消えている。
先に帰ってしまうとは思い難かった。
教室の扉を開くと、窓の外の外灯の明かりが室内を薄く照らす。
窓際の席に座る天が、長い脚を窮屈そうに突き出したまま突っ伏して眠っていた。
「課題、終わったのかよ?」
小さく呟いて、前の席に掛ける。
伏せた横顔がキレイだ。
長い睫毛も、すっきりとした輪郭も、薄い唇も……青み掛かる柔らかな髪が、僅かな身動ぎで顔を隠してしまう。
俺はそれを払って……その指先で唇に触れた。
ふにっと柔らかくて、少し乾燥していて、呼吸が温かくて少し湿っていて……
「……ん……晴ちゃん?」
いつもの眠そうな目を更に眠たげに開くと、髪と同じ色の瞳が見える。
霞のかかったような、烟ったような瞳が魅了する。
引き込まれるみたいに顔を近付けて……ガツン! と思い切り頭突きを食らわした。
「……いたいよー、晴ちゃん……」
「痛ってー……目ぇ、覚めただろ?」
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