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「で、どこ?」
「ここ」
天が指差した場所を覗き込むと、最初から当てはめる公式が間違ってる。
「こっちの公式使うんだよ」
俺も公式が間違ってるんだろうか……
だから男だってわかってるのに、天を好きな気持ちが消しきれないんだろうか。
「これが繰り上がって、こっちが……」
呟きながら計算する天をちらりと盗み見る。
寛げたシャツの隙間から見える鎖骨が妙に艶めかしい。
触ったらどんな顔するんだろう。
いつも通りのぼんやりなのか、それとも……俺は指先を天の首筋に滑らせる。
耳の後ろから、首筋を伝って、開いたシャツの下の鎖骨を撫でた。
「はれ……ちゃん……?」
困惑声にはっと我に返る。
俺は今、何をした?
「あ……ほ、ホラ、襟開き過ぎ。今朝風紀委員に怒られたばっかだろ。俺みたいに反省文書かされるぞ」
取ってつけたような言い訳を並べてふと見ると、天の白い頬がふわっとピンクに染まっている。
烟る瞳は惑いの色を湛えて、艶めいた。
その引力が、また俺を引き寄せる……
「ち……ちょっと顔洗って来る。問題解いておけよ!」
あれは……マズい。
あんな顔されたら、変な気になる。
廊下を走って水道に着くと、ザバザバと顔を洗う。
火照った頬が冷やされた。
この状況はかなりヤバい。
このままじゃ押し倒しかねない。
でも、離れるのは嫌だ……それは無理だ。
大きなため息を吐くと、廊下の先から声が聞こえた。
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