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俺にも俺なりの人付き合いの方法があって、砂野にも砂野なりの方法があるんだろう。
「あと、勝手に人の恋人を猫にしないでくれますー?」
結構怒っている。敬語ながら。
「俺はお前の恋人なり元彼女が乗り込んで来たんだと最初思った」
「どんな修羅場体験してんの、城山」
「……ごめん、もうユズさんを盾にはしない」
「ユズさん、盾になって偉いな」
ソファーの下を通るユズさんの頭を撫でて砂野は言った。するりとその手にすり寄ってから、目的地である水飲み場まで行く。
小さく息を吐いて、砂野はソファーから立ち上がった。その様子を目で追う。
「あ、そういえば俺、明日高校のときの友達の結婚式だ」
思い出したように振り向く砂野と目が合う。
「田澤の」
「田澤……大地の?」
「そうそう。久々に連絡きて、良かったら来てって言われた。城山も行くだろ、一緒に行こーよ」
「おま、行っても大丈夫なのか?」
「え、爆発予告でもされてんの?」
「会場が違う意味で湧きそうなのは目に見える……」
というか、大地。聞いていない。
その旨を当人に送ろうかと思ったが、前日で色々用意もあるだろう。明日、会って話せたら言うか。言える状況にあれば。
「大丈夫大丈夫。田澤が主役なんだから、皆俺になんて興味ない」
「俺はお前の考え方が時々羨ましくなる」
「そう? 真似して良いよ」
「いや、砂野がいるから俺は良い。このままで」
そう言ってから、テレビをつける。何故か砂野が戻ってきて、俺とテレビの真ん中に来た。明日の天気が見えない、と顔を横に
傾けると、またしても雪崩るようにしてこちらへ抱きついてくる。
「おもい、天気が見えない」
「明日は晴れ、多分」
「砂野天気予報?」
そう、と言いながら抱きついてくる砂野の背中をとんとんと叩いた。
俺の家の家賃の何倍あるんだ、というマンションを前に佇む。
「俺、ここで待ってるわ」
「上までおいでよ」
砂野に腕を引っ張られてエントランスへ入る。サラリーマンをしていた頃、こんな綺麗なエントランスの会社があったなと思い出す。
スーツは自宅にあるという砂野に引っ張られ、ここまで来た。エレベーターはカードキー式で、そんなことに目眩がしそうだった。
「広!」
「そう?」
「クローゼットだけでうちの寝室くらいだろ……」
「そう?」
「お前の距離感覚どうなってんだ」
心配になる。
暗い廊下の向こうに更に広いであろうリビングがあるのかと思うと恐ろしい。
「この椅子座ってて」
「ああ、ありがとう」
「スーツ、一着くらい城山の家に持ってった方が良かったな」
「そんな良いスーツ入れる場所がねえわ」
ブランドのロゴがタグが見えた。砂野が唇を尖らせながらこちらを振り向く。
「やっぱり城山がここに住めば丁度良くない? ユズさん連れてさ」
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