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テレーゼは立ち上がり、更ににっこり笑うと、周りを見渡し、声を出す。
「お兄様ぁぁ! 今の聞きましてー?」
どこからともなく、テレーゼの3人の兄達が現れる。
「しかと、聞いた」
「言質はとった」
「天使のテレーゼを不細工とは」
「まぁまぁ、いいのですよ。不細工なのは本当ですから。さてさて、お兄様、例のものを」
1番上の兄、アレクが指をパチンと鳴らすと、魔法でハラリと書類が1枚現れた。
俺が呆然としている傍らで、テレーゼはサラサラとその書類にサインをし、満足そうに微笑む。
「お兄様、ありがとうございました。さて、ロイ様! 私が婚約破棄同意書にサインをいたしましたので、ご安心くださいませ」
「…………え?」
婚約破棄同意書と呼んだ書類を俺の前に置き、説明を始める。
「私達が生まれる前に作成された、この婚約破棄同意書は、王家側から破棄の申し入れがない限り、ハイウォール家の人間はサインできない魔法がかかっておりました。私がサインできたという事は、ロイ様が婚約破棄を申し入れたと同義ですのよ」
あまりの事の成り行きに、俺は頭がついてこれず、目の前で何が起こり、テレーゼが何を話しているのか理解できず、ただただ、婚約破棄同意書を見つめるだけだった。
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