side ロイ

6/8
前へ
/16ページ
次へ
 テレーゼは立ち上がり、更ににっこり笑うと、周りを見渡し、声を出す。 「お兄様ぁぁ! 今の聞きましてー?」  どこからともなく、テレーゼの3人の兄達が現れる。 「しかと、聞いた」 「言質(げんち)はとった」 「天使のテレーゼを不細工とは」 「まぁまぁ、いいのですよ。不細工なのは本当ですから。さてさて、お兄様、例のものを」  1番上の兄、アレクが指をパチンと鳴らすと、魔法でハラリと書類が1枚現れた。  俺が呆然としている(かたわ)らで、テレーゼはサラサラとその書類にサインをし、満足そうに微笑む。 「お兄様、ありがとうございました。さて、ロイ様! (わたくし)が婚約破棄同意書にサインをいたしましたので、ご安心くださいませ」 「…………え?」  婚約破棄同意書と呼んだ書類を俺の前に置き、説明を始める。 「私達が生まれる前に作成された、この婚約破棄同意書は、王家側から破棄の申し入れがない限り、ハイウォール家の人間はサインできない魔法がかかっておりました。(わたくし)がサインできたという事は、ロイ様が婚約破棄を申し入れたと同義ですのよ」  あまりの事の成り行きに、俺は頭がついてこれず、目の前で何が起こり、テレーゼが何を話しているのか理解できず、ただただ、婚約破棄同意書を見つめるだけだった。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

83人が本棚に入れています
本棚に追加