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「では、殿下、ごきげんよう」
「ま、まて、テレーゼ!!」
踵を返し、3人の兄達と去って行こうとするのを慌てて呼び止める。テレーゼはスカートをなびかせ、クルリと振り向き、こぼれるような笑顔を見せた。
「まぁ、殿下。私と殿下はもう他人ですのよ? テレーゼなんて、親しそうにお呼びになられては示しがつきませんわ。ハイウォール公爵令嬢とお呼びくださいませ」
極上の微笑みと完璧なお辞儀をこなすテレーゼの所作の美しさに、こんな状況であるにもかかわらず、見惚れてぼぅとしてしまい、ハッと我に返る。
「いや、あの……ハ、ハイウォール公爵令嬢……あの、その……婚約は破棄されたのか?」
「はい」
「さっきまでは、婚約者だったのに?」
「はい」
「今は……」
「ただの臣下ですわ」
テレーゼは俺に優しく微笑んだが、その瞳の中にチラッと憐れみの色が見えた。
「では、ごきげんよう、殿下」
もう一度、素晴らしく美しいお辞儀をすると、何も言えずに立ち尽くしている俺を庭園に残し、兄達と並んで行ってしまった。
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