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「輪を乱すもなにも、私は先生の指示に従って、写経をしていただけなんですがね」
教室内にピリピリとした緊張感が張りつめた。私は吉田さんと黒川さんの間に立つと、両手を広げて、二人を制した。
「二人とも落ち着いて下さい。今回のことはすべて、私の指導力不足が原因です。大変申し訳ありませんでした。他の生徒さんもいらっしゃいますし、冷静になってはもらえませんか」
そう言って私は、二人に頭を下げた。さすがに二人ともそれ以上言い争うつもりはないようで、それぞれの椅子に座ってくれた。私はほっと胸をなでおろした。
しかしその日以降、吉田さんと黒川さんは挨拶もしなければ、目を合わすこともしなくなった。おかげで教室の雰囲気は重苦しく、生徒さんの笑顔もなくなってしまった。
ある日。私は自宅の庭に立って、考え事をしていた。吉田さんと黒川さんを仲直りさせて、以前のような楽しい教室に戻す方法はないものか。
私は、庭の紅葉したイチョウを見上げた。そして、自分が小説教室を始めた頃のことを思い出した。私は小説教室を通じて、たくさんの人と知り合い、仲良くお話をすることが夢だった。
しかし最近の私は、教室をただの仕事の一つとして、ルーティンのようにこなしていた。だから生徒さんとの会話も事務的なことばかりで、プライベートな話をすることも減っていた。
今この教室には、圧倒的にコミュニケーションが足りていない。だから二人が仲直りするきっかけを作りたいなと、私は考えた。
するとイチョウの木から葉が落ちてきて、私の目の前をひらひらと舞った。私はその葉を、両手で掴んだ。その瞬間、私はいいアイデアを思いついて、大声で叫んだ。
「よし、これならきっと、うまくいくわ!」
私は急いで家の中に戻ると、スマートフォンを手に取った。そして私は教室の生徒さんが登録しているグループラインに、とあるメッセージを送った。
☆
「いやー、これは、見事な紅葉ですなあ。まさか先生のお庭に、こんな立派なイチョウがあるとは」
吉田さんは私の庭のイチョウを見上げて、大きな声で言った。「喜んでもらえてよかったです」と、私は吉田さんに笑った。
週末の日曜日。私の家に、小説教室の生徒さんが集まっていた。きっかけは、先日私が教室のグループラインに送ったメッセージだった。
(今、私の家のイチョウが、きれいに紅葉しています。もしよかったら、皆さん見に来られませんか? 当日はバーベキューパーティーも予定しています。みんなで楽しみましょう)
私は生徒さんの皆さんにもっと仲良くなってもらうために、今回の催しを企画した。
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