板挟みの秋

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 今日の催しには吉田さんと、黒川さんも参加してくれた。  私は庭の中心に設置された、バーベキュー用のコンロを見つめた。これは黒川さんが持ってきて、組み立てて下さったものだ。  すると玄関から、エプロン姿の吉田さんが現れた。吉田さんが両手で持っているお皿の上には、お肉や野菜がたくさん盛られている。 「みなさん、お待たせしました。それじゃあ焼きますよー」  吉田さんの声に反応して、それまで紅葉を楽しんでいた生徒さんが歓声を上げた。  それから吉田さんが肉を焼き、焼けた肉を黒川さんが箸で紙トレーに移していった。私はコンロの傍で飲み物の準備していたのだが、お二人の息のあった連係プレーを見て、目を丸くした。お二人は手際よく、肉と野菜をすべて焼き終えた。  吉田さんと黒川さんはハイタッチをして、「お疲れさまでした」と、お互いを称えた。すると吉田さんは黒川さんを見つめて、すっと頭を下げた。 「以前小説教室で写経をした時に、私が大きな音を立ててしまって、申し訳ありませんでした。今後はああいったことがないよう、気をつけます」  すると黒川さんは顔の前で両手を振って、吉田さんに言った。 「謝らないといけないのは、私の方よ。吉田さんに悪気はないって分かってたのに、かっとなって失礼なことを言って、本当にごめんなさい」  お互いに謝り合うお2人を見て、私はほっと胸を撫で下ろした。そして私は、お二人に駆け寄った。 「吉田さん、黒川さん。仲直りして下さって、本当によかったです。私もこれからはもっといい指導ができるよう、頑張ります。さあ、お腹もすきましたし、みんなでお肉を食べましょう!」  その時、私たち3人のお腹が同時に、グ~と鳴った。私たちは顔を合わせて笑った。  そして私たちは庭のイチョウを見ながら、楽しく食事をした。お肉はとても柔らかくて、美味しかった。吉田さんと黒川さんはお酒を飲みながら、笑顔で話している。すると黒川さんが、吉田さんに言った。 「吉田さんが苦戦されてた、お話作りのことなんだけどね。吉田さんは家電がお好きだから、家電をネタにしたらどうかしら。『空飛ぶ掃除機』とかね。もし吉田さんさえよければ、私も一緒にお話を考えるわ」
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