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現世
「ねえ、わたしたち前世で、来世も会おうって約束してたと思わない?」
「うん。僕もそう思う。歳は離れちゃってるけどね」
「確かに。早く生まれすぎてごめん」
「遅く生まれすぎてごめん」
寄り添い手を繋ぐふたりは、幸せそうだ。
「中身も似過ぎだし、もしかしたら双子だったかもしれないね」
「確かに。それはそれで深い繋がりだね」
「ね。一心同体って感じ」
男は歳の離れた彼女の髪を愛しげに撫でる。
「来世でも、僕と出会ってくれる?」
「うん。それ以外、考えられない。約束」
「うん。約束」
女は男を見つめ、何度目かの告白をする。
「大好き。きっと多分、生まれる前から愛してる」
「僕も、ずっと愛してる」
ふたりは、どちらからともなく、まるで磁石のような引力で惹かれ合い、ごく自然の流れに身を委ね、その唇と唇を交わした。
前世で見上げた空が、ふたりが離れたその意味を、そっと優しく見下ろした。
了
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