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「お前たちの家に金を貸しているのは、俺の家だ! 態度次第では優しくしてやるのに、その言い草はなんだ」
「金を貸してくれているのは、お前じゃない。これ以上紗輝の時間を無駄にさせるな」
今度は煌が言葉を返すと、弥彦は目を見開き、紗輝は隣でくすりと笑った。
弥彦はわなわなと体を震わせ、顔を真っ赤にして鼻息を吐いたあと、ふっと力を抜いてふふふと笑った。
「まあ良いさ。父に言えばどうとでもなる。そう、なんなら紗輝を俺の許嫁にすることだって……」
言い終わらぬうちに、弥彦は天を仰いだ。自分が煌に殴られ地面に背をつけたと気が付く前に、煌が胸ぐらを掴みあげ次の拳を振り下ろそうとしている。思考が追い付かず、咄嗟に目を瞑ることしか出来ない弥彦は、紗輝によって助けられる。
「煌、もういいよ。ごめんね、ありがとう」
紗輝は、振り下ろされようとしていた煌の手を両手で包み、それをそっと下へと導いた。少しずつ、煌の拳から力が抜けていく。
紗輝はそのまま煌の手を握り、行こう、と言って煌を促した。
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