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壮大な山々に囲まれた、人口500にも満たない小さな村。ここでは林業と農業を生業とする人々と、流通を担うものたちが平凡に暮らしていた。
「煌、今日もお空が綺麗だね」
「ほんとだね。紗輝」
空に広がる広大な青のキャンパスを見上げながら、仲睦まじい双子の兄妹が笑い合う。
「空って、いつも私たちを見守ってくれてるように感じない?」
「確かに。なんなら、僕らに話しかけてこない?」
「あはは。それ、すごくわかる」
齢十五になる紗輝と煌は至極自然に笑い合い、互いの手を握りしめた。
「紗輝、煌、こっちに来て手伝って」
父親が病気で亡くなってから、女手一つでふたりを育ててくれた母親は、仲の良い兄妹を微笑ましく見つめた。
母に呼ばれた紗輝は、最近ぐんぐんと背が高くなる煌の顔を見上げ、気付けば逞しく大きくなったその手をくいと引っ張った。
「煌、行こう」
「うん」
煌は、徐々に女性としての魅力を増してゆく紗輝を後ろから見下ろし、リズミカルに揺れる腰まで伸びたその艶やかな黒髪に愛しさを感じ、眩しげに目を細めた。
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