マイ・スイート・ホーム

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「えー、ひっどーい、今の私じゃダメってこと??」  冗談交じりにそう言えば、学生時代の友達は「そんなことは言ってないけどさ」と笑う。  “けどさ”、それは逆接。  その後に来るのは、反対の言葉――、  今の私がダメなの?  そういうわけじゃない。  ……じゃあ、“期待外れ”とでもいいたいの? 「もっとバチバチにメイクとかしてくると思ったけど、そうでもなくて。靴だってスニーカーだし」  そう言われて、初めて自分がスニーカーを履いてきたことに気がついた。完全に無意識だった。仕事以外のパンプスなんて、もう何年履いてないんだろう。 「それに、昔の美香子だったらきっと美容院でヘアセットとかして来てるでしょ。ネイルもしてないし」  そうだろうか。大学時代ずっと一緒にいた友人がそう言うのなら――きっと、私はそうなんだろう。  急に結んだだけのハーフアップが恥ずかしくなった。ぐっと喉に力を込めて、へらりと笑って見せる。
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