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最終回
「優!」
「ノリちゃん」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
言葉が続かない。かと思いきや・・・
「あの!」「そのっ!」
言葉がぶつかる。
「ノリちゃんからどうぞ」
「優からでいいよ」
「いや、だからノリちゃんから・・・」
「優からっ!!」
押し切る典子。
「ノリちゃん、僕の事嫌いになった?」
「・・・・・・え?えーーー?なんでそう思うの?」
「だ、だって、全然LINE返してくれなくなったから・・・」
「あ、あれは・・・」
「久々に会った時もLINEの事は全く触れないし、なんで無かった事にするんだろうってずっと気になってた」
「ご・・・ごめんなさい!忘れてたの!」
「忘れてた?1ヶ月分?」
「うん!実習の時から、もう一杯一杯で!嘘みたいだけど本当なの!」
「・・・分かった。信じるよ。じゃあ、今日は僕とデートしてくれるんだよね?」
「うん!・・・だけどね・・・あっ!」
「行こうか」
優は典子の肯定を確認すると、その続きは聞かずに改札口に歩き出す。
典子は現在の所持金が872円だという事を言うタイミングを逃してしまった。
どうしよう・・・片道540円、とりあえず行って帰りは私だけ泳いでかえろうか・・・なんて考えていた典子に・・・
「はい」
優は切符を2枚購入し、そのうちの1枚を典子に渡した。
「え・・・」
「今日は僕が全部出すから、ノリちゃんの財布の出番は無いよ」
「え・・・でも、悪いよ!」
「大丈夫、ボジョレーヌーボーもクリスマスケーキも沢山売ったから」
「え・・・え・・・え・・・?」
優のスーパーでもバイトノルマが課されていた。
しかし、優はこの日の為に頑張った。
人見知りな性格なのに、頑張ってお客さんに声を掛けた。
最初は誰も相手にしてくれなかったけど、それでも優は典子の事を想って諦めずに声を掛け続けた。
そしてノルマを自腹を切ることなく達成すると、さらに売り続けて店内トップの売り上げ成績を残し、金一封のボーナスを獲得していた。
「楽しみだね」
「うん」
大人から押し付けられた理不尽が、皮肉にも若い二人の恋を盛り上げるスパイスとなったそんな物語でした。
ー終ー
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