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日没ぎりぎりで王都に舞い戻り、楽の音や笑い声、尽きせぬ祝いの音頭やかち合わされるジョッキの音がこぼれんばかりの大喧騒をくぐり抜ける。
王城では衛兵たちから目礼や会釈を受け、いくつもの区画を通ってようやくめざすフロアに辿り着いた。
昼の婚礼、披露宴。貴族たちの懇親会。大晩餐会の次は大舞踏会。
もう、何度目かの衣装替えを終えた、幸せな一対のふたりが彼らの懐刀を出迎える。
「ご苦労だった、キキョウ。よく間に合ったな」
「お陰さまで。人使いの荒い母には慣れっこですよ。殿下やアイリス様こ、そ……………………ッ!?!? 痛い! 何をなさるんです!」
パシン! と、小気味よい音とともに衝撃。痛みと驚きに前につんのめる。
どうやら、顔だけはにこにこと愛想の良い紅髪の王太子に後頭部を叩かれたらしい。一拍遅れで気づき、奮然と抗議した。
しかし。
「天誅だな。ぼうっとアイリスに見惚れるからだ」
ふっ、と笑ったサジェス――王太子殿下は、案の定まったく取り合わない。身長差はさほどない男ふたりが、一見にこやかに睨み合う。
キキョウは、口元だけに笑みを刷いてにじり寄った。
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