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 ややあって「仕事に戻ります」と、ルシエラは告げた。その佇まいは、本当に何事もなかったようだった。  頭部から背の中ほどをすっぽり覆う巫女の聖布を見送り、キキョウは院長室を再訪する。  摘みたてのハーブの束は組紐で結わえてもらい、母への礼状もつつがなく受け取った。  そうして巫女見習いがティーカップを片付けに退室した矢先、すばやく本来の案件を切り出した。  ――すなわち、先ほど聞き出した行商人の仔細について。  院長は、やはり、と眉をひそめた。  キキョウは怪訝顔になる。 「『やはり』? では、巫女院長からご覧になっても怪しい奴らだったのですね」 「ええ。ですが、最近お預かりした令嬢が彼らをひどく気に入ってしまって。行儀見習いのために来られた、()()()巫女なのです。彼女が飽きるか、還俗するまでの辛抱と思っておりましたわ」 「辛抱」 「そう。ここは聖エレナにあやかって主神様に祈りを捧げる場所ですからね。美々しい品はたしかに良いものですが、彼らは商売の矛先を間違えていると感じました」 「う〜ん、なるほど。仰るとおりです」
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