緊急搬送

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緊急搬送

深夜ER救命救急室の患者到着のランプが灯った・・・・・・急いで搬入口へと向かう。 数分後救急車が到着。 ストレッチャーに乗せられた患者を見る。 午前0時54分 強盗に至近距離から腹部を銃撃され被弾、0時26分救急車で当院救急外来へ搬送。 男性、ピストルによる左腹部被弾血圧触診で60mmHg,左側腹部に射入創、左側腹部の皮下に銃弾を触知した。 顔面蒼白で四肢冷感あり、臓器損傷の程度を確認するためCT検査を施行 明らかな大血管損傷は認めなかった、大量輸血の準備を行い当院搬送約1時間後に緊急手術を開始した。 左側腹部に6mmの銃痕を認め開腹すると腹腔内は大量出血しておりS状結腸間膜と空腸間膜が損傷を受け、空腸と上行結腸が穿孔していた。 空腸部分切除、回盲部切除術を施行し右側腹部皮下から弾丸摘出し洗浄ドレナージ後手術を終了した。 氏名・・・白坂裕翔(しらさかゆうと) 30歳男性 既往症・・・・特記すべきことなし 主訴・・・・・銃弾による腹部外傷 職業・・・県警捜査一課 身長・・・・185cm 体重・・・・55㎏ 担当医師・・・・・篠宮海飛(しのみやかいと) 5時間余りの手術が終わり患者をICUに運ぶ・・・・・様々な生体情報モニタを設置し心電図、観血血圧、体温、脈拍数、動脈血酸素飽和度、気管内チューブ、点滴、そして医療介護ミトンを装着し両手をベッドに固定する。 銃による緊急搬送は篠宮海飛(しのみやかいと)にとって始めてだった・・・・・海外のニュースで銃撃戦などと言うものを見ることはあっても自分がそんな患者を受け持つなどとは思ってもいなかった。 銃で撃たれることの恐怖と激痛は本人にしか分からないだろう・・・・・・炎のように焼けた鉛玉が自分の体内を襲う畏怖・・・・・想像しただけで震えが来そうだった。
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