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退院
退院の日程が決まった・・・・・来週月曜日
今日を入れて後3日・・・・・・今夜先生が来たら言いたい・・・・・退院してからも逢ってほしい・・・・・・でも、きっと言わない。
裕翔はこれまで友達や彼女はいた・・・・・高校から大学まで友達も多かったし彼女もいてそれなりの深い付き合いもあった・・・・・・でも・・・・親友や恋人と呼べる存在は一度もいなかった。
心から信頼し合うような親友は作らないようにしていた・・・・
彼女にしても会話を楽しんでデートをして気持ちが高まれば夜をともした・・・・・それでも恋人だとは思わなかった。
深く付き合うほど失った時の失望感が大きい事を知っているから・・・・・・いつでも《じゃぁ、また》そう言って別れられる存在のままで過ごした。
だから今度も・・・・・・・《先生・・・・いろいろお世話になりました》そう言うつもり・・・・・・
夜になっていつものように先生が部屋へ来た・・・・・
いつものようにベッドの横に椅子を置いて話をする・・・・・退院してもしばらくは今までのような激しい行動は無理だと言われる。
先生にとってあくまでも自分は患者なのだと思う・・・・・・診察で患者の手を取る事だって普通にある・・・・・患者が安眠できるように側にいる事も・・・・・・全部患者だから・・・・・。
逢いたい・・・・そう思っても退院したらまた怪我でもしない限り逢うことはない・・・・・・
話をしながらそんなことを頭の隅で考えていたら・・・・・胸がいっぱいになってジワッと涙が滲んできた。
泣いてることを知られたくなくて眠いふりをして目を擦った・・・・・・
そんな自分に眠かったらベッドを倒しましょうかと言ってくれる・・・・・・
このまま寝たら先生は帰ってしまう。
だからといって・・・・・・まだ眠くないとは言えない・・・・・・胸に押し込めた思いが口から出そうになって・・・・
ベッドを倒してもらう・・・・・掛布団を引っ張り上げて口元を隠す・・・・・・少しだけ出した手を先生が握ってくれた。
温かい手のぬくもりが嬉しくて思わずギュッと強くつかんでしまう・・・・・・先生はそれに答えるように握り返してくれた。
そんなことをされたら勘違いしてしまう・・・・・
「退院しても不安になったらいつでも訪ねてきてください」
「・・・・・・・・・・・・」
「心療内科には話しておきます・・・・・・私でもいいです」
「先生でもいいんですか?」
「いいですよ・・・・・・いつでも訪ねてきてください・・・・専門ではありませんが力になれると思います・・・・・不安なままにしないでくださいね」
「・・・・・・・はい・・・・・・・」
私でもいいと言われて・・・・・それなら連絡先を・・・・と・・・・・言いたかった・・・・・・でもやっぱり・・・・・
先生のいつでも訪ねてきてください・・・・・・その言葉を聞いて・・・・・あぁー自分はやっぱり患者なのだと思うしかなかった。
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