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逢いたい
夜になるとあの暖かい手を思い出す・・・・・・毎晩眠るまで手を握ってくれた・・・・・・今夜もそうしてほしい。
耳に優しく語り掛けてくれるあの低く優しい声を聴きたい・・・・・・眠るまで側にいてほしい・・・・・
そんなことばかりを考えて眠れなかった。
篠宮海飛はあえて月曜日退院する裕翔に逢わなかった・・・・・逢って退院おめでとうと言うべきだったかもしれない。
でも逢う勇気がなかった・・・・・・
外来の診察が終わって入院患者の病棟へ行く・・・・・いつも裕翔がいたあの部屋は空室になった。
空のベッドが置かれていた・・・・・・あの日裕翔が救急搬送されてから毎日見ていた彼の顔が浮かんでくる・・・・・夜脅える彼の手を握っていたのも寝るまで側にいたのも好きだったから・・・・・・
裕翔の仕事と自分の仕事に接点など何もない・・・・・偶然会う機会も絶対と言ってない・・・・・・やっぱりもう二度と逢えないと諦めるしかなかった。
1週間の休みを終えて仕事に復帰した・・・・・まだしばらくは内勤で報告書やら計画書やらの事務仕事ばかりだったが、それでも家で一人いるよりはずっと良かった。
少なくとも彼の事を考える時間は少なくなっていく・・・・・・夜もなるべく思い出さないようにした・・・・・それでも・・・・・・やっぱり逢いたかった。
時間が経てば少しは気持ちが楽になるかと思っていた・・・・・だがむしろ手の感触や優しい声は色濃くなるばかりだった。
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