特別な患者

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特別な患者

篠宮は手術が終わって始めて患者の顔を見た・・・・・こんな端正な顔の刑事が要るのだろうか?そう思った。 刑事と言えば強面で色黒でがたいがよくて人相の悪い男・・・・・それが自分の刑事のイメージだった・・・・・・だいぶ偏見はあると思うが・・・・・ それが今眠っている刑事は・・・・・・ドラマの中に出てくるようなほっそりとして色白で鼻が高く閉じた目には濃い睫毛、色を無くした唇も魅力的だった・・・・・・ 個人的な感情で時間があれば何度も彼のもとを訪れた‥‥…診察のふりをして・・・・・・彼と言葉を交わしたかった‥‥…拳銃で銃撃された刑事・・・・・・犯人が腕をまっすぐに伸ばしていたら死んでいたかもしれない。 犯人の持っていた銃はニューナンブM60・・・・・警察官が持っているものと同じだった・・・・・重さは670g 素人が片手で発砲するには重い・・・・・・犯人は片手で持って発砲したのだろう・・・・・・銃の重みで銃口が下を向いたのが幸いした。 篠宮海飛はその日から夜勤の時はもちろん非番の時も夜になると病室を訪れて白坂裕翔の側に寄り添った。 そばに居てたわいのない話をして同じ時間を過ごす・・・・ 忙しい日々の中今では貴重な時間だった。 同僚たちに聞かれたら・・・・・身体の傷と同時にメンタルケアーも大事だからしばらく様子を見るためだと言った。 白坂裕翔は夜になると必ず来る篠宮海飛を待ちわびている自分に来が付いていた。 ただ・・・・忙しい仕事にも拘わらず睡眠もとらずに来てくれる事に申し訳なさを感じていた。 そして今夜もまた22時を過ぎたころに篠宮海飛が部屋へきた・・・・・・ 今日は昼も診察に来ていた、夜勤ではないのがわかっていた。 「先生・・・・・今日昼も仕事してましたよね?」 「はい今日は日勤でしたから」 「だったらこの時間は休まれたほうが・・・・・俺は大丈夫ですから」 「私なら大丈夫です、あなたが寝たら私も仮眠室で寝ますから気にしないで寝てください」 「でも・・・・・俺の為に睡眠不足で先生になんかあったら俺・・・・・・」 「気にしなくても自己管理はしてます・・・・それよりあなたは身体もですけど精神的な事も気を付けなくてはいけませんよ」 「精神的な事・・・・・?」 「そうです・・・・・いわゆるPTSD《心的外傷性後ストレス症候群》の事です。  今は何ともないようにしていても強烈な心的外傷体験をきっかけに、実際の体験から時間が経過した後になってもフラッシュバックや悪夢に陥ることがあるという事です」 「確かに・・・・・それはあると思います・・・・・夜間一人になると急に怖くなって眠れなかったり不安になったり・・・・・」 「でしょ・・・・・そんなとき一人でいるのはよくないです」 「だからって・・・・・・先生にそこまで面倒掛けるのも・・・・・」 「面倒?・・・・・・そんなこと思ってもいません・・・・・・あなたは私の大切な患者です」 患者・・・・・・ 篠宮海飛にとって俺は患者だから・・・・・これも仕事だから・・・・それでもいてほしいかった・・・・・・夜が待ち遠しかった。
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