それぞれの想い

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それぞれの想い

あの事故で多くの人がなくなった・・・・・・多数の負傷者が出た時に誰を優先するかの分類をトリアージと言う。 遺体や手当てをしても助かる見込みのない絶対予後不良者に対する救助活動は後回しとなる・・・・・非情な事だと思うが一人でも多くの人の生命を救うためにはやむを得ない処置だと言える。 だが・・・・・もしその後回しにされたのが自分の両親だったら・・・・・子供や親だったら・・・・・・篠宮海飛の両親もその中に分類された・・・・・・手当てが早ければ助かったかもしれない・・・・・後でそう思った。 それが生涯の仕事として医師を選んだ理由だった・・・・後回しにされた命・・・・・そんな事態が少しでもなくなれば・・・・・・生きられる命を救いたかった。 裕翔のリハビリは順調に進んでいた、全身状態の推移や疼痛管理状況を把握しつつリハビリステーション室でのトレーニングへと移行した。 呼吸トレーニング、上下肢筋力トレーニング及び有酸素トレーニング、バランストレーニングなど担当理学療法士の指導により退院後の生活を見据えたリハビリに移行した。 食事もほぼ通常に戻り点滴以外の器機も外されて夜寝るときも邪魔なものがなくなった。 それでも夜になると篠宮先生は相変わらずベッドの横で椅子に座って眠るまで手を握っていてくれる‥‥…最近では眠るまでいろいろな話をするようになった・・・・・・ 裕翔は先生が毎晩来るのは仕事の一環だと思っている・・・・・・そうは思っていても夜になって先生が来るのを心待ちにしている自分がいた。 早く自分が寝なければ先生が帰れないのはわかっていても目は冴えてくるばかりで話は尽きなかった。 退院したら逢えなくなる・・・・・・だからといって友達になってというわけにもいかない。 連絡先を教えてもらう勇気もなかった・・・・・・先生が来るのはあくまでも仕事の一環なんだと自分に言い聞かせた。
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