2人が本棚に入れています
本棚に追加
森のように木々が立ち並ぶ中を、奥へ奥へと入っていく。半時間も歩けば視界が開けて、美しい川が流れていた。
川幅は十メートル程度。手前には河原が広がっているが、反対側は崖になっているので、こちら側からしか行かれない釣り場だ。
今日の私の目的地であり、私の鮎釣りデビューとなる場所だった。
いつもはルアーやフライでブラックバスやブルーギルを釣ったり、エサ釣りでコイやフナだったり。
そんな私が鮎釣りにチャレンジしようと考えたのは、ほんの気紛れだった。釣具店に貼ってあった「鮎釣り解禁」の告知を見て、
「たまには美味しい川魚を釣るのもいいかな」
と思ったのだ。
もちろん竿も仕掛けも全く違うので、すぐさま鮎釣りの道具一式を衝動買い。帰宅後、初心者でも釣れそうな場所をインターネットで調べて……。
天気の良い週末の今日、その川を訪れたのだった。
渓流用のシューズ越しでも川の冷たさが感じられて、なんとも心地よかった。
わくわくしながら、水の中に足を進める。いつも新しい釣り場へ行くたびに胸が高鳴るが、なにしろ今日は釣り場だけでなく、釣りそのものが新しい。興奮もひとしおだった。
ひとくちに鮎釣りといっても色々な釣り方がある。その中で真っ先に思いつくのは、やはり友釣りだろう。
これから釣ろうとする野鮎の縄張りで、針をつけたオトリ鮎を泳がせる。すると野鮎は、自分以外の鮎を己の縄張りから追い出すために、オトリ鮎にアタック。その際、針に掛かってしまう……という釣り方だ。
本来は生きたオトリ鮎を専門店から購入するらしいが、最近ではルアーを用いた友釣りも行われているという。それならばルアーフィッシングの一種であり、いつもの釣り方にも近くてハードルが低く感じられたので、今日の私は鮎釣り用ルアーを用意してきていた。
最初のコメントを投稿しよう!